2011年 09月 14日
希ちゃんだよー |
続きですよフヒヒ。
今回も希ちゃんとメルフィンが大活躍です。
希ちゃんが病んだり、涙目になったりします。
では、お楽しみください。
「では、私達が戴いて行くということでもよろしいでしょうか?」
聞きなれない声が響いた。
2人は同時に声のする方向を向いた。
先ほどかなりの雨が振りつけていた窓ガラス。
すでに雨は止み、月が出ていた。その月を背景に夜風に大きくマントをはためかせながらそこに立つ人影があった。
だが、その人影は真っ黒なマントに真っ黒な包帯で顔や手を覆い、明らかに怪しさ満点。
しかもその手には・・・
「「翡翠のネックレス!!!!」」
2人は同時に叫んだ。
先ほどまでガラスケースに入っていたはずなのに一瞬でそのネックレスは黒マントの人の手に収まっていたのだ。
「ネックレスだけじゃない・・・ルシファー・・・あなたの大事なものも預かってるわ・・・一応、アナタにとってネックレスは盗まれて嬉しいものだしね・・・返して欲しければ、横浜の埠頭まで来なさい・・・」
そう言うと人影は4Fの高さもある窓から飛び降り・・・姿を消した。
下の方で車の走りだす音がする。
しばし希ちゃんとメルフィンはボーっとしたままその光景を眺めていた。
「・・・ってボーっとしてる場合じゃない!!」
先に立ち上がったのはメルフィンだった。
「あなた、早く手錠を外して!!あの翡翠のペンダントは私が盗む予定なの!!」
「何言ってるの!?あなたはこれから警察署!!ペンダントは私が追う!!」
「あぁーーーーーーーもう!!このわからず屋!!」
怒鳴り散らし、メルフィンは手に持ったステッキを希ちゃんへとかざした。
「なら、無理にでも外す!!」
「!?」
「本当は魔法はご法度なんだけど・・・こういう時は使わせてもらう!!えっと・・・解錠の呪文は・・・」
メルフィンが小さく呪文を唱える・・・
一方で希ちゃんはまったくメルフィンが言ってることがわからなかった。先ほどから魔法だのご法度だの何を言っているのか・・・
だが、呪文を唱えたその瞬間・・・
希ちゃんの頭上から小さな金ダライが落下した。
コーンッと小気味良い金属音が接触した希ちゃんの頭から聞こえた。まるでお笑い芸人のような展開に、頭を抱えて涙目で頭を抑える希ちゃん。
「あれ・・・間違えたかな・・・」
小さくそう言って少し違う別の呪文を唱えるメルフィン・・・
だが・・・
相変わらず落ちてくるタライ。また希ちゃんに直撃し、希ちゃんが頭を抱える。
「あ・・・あれ?」
また違う呪文・・・また直撃・・・
「・・・・・・何が間違ってるんだろう・・・」
間違えること十数回・・・
すでに一人涙目どころか悶絶している人が居るのですが・・・
と・・・メルフィンが有ることに気がついた・・・あれ?今、目の前の少女は悶絶してるんだから、今のうちに手錠の鍵ピッキングして外しちゃえばいいんじゃね?
「ごめんね・・・」
失神した希ちゃんをよそにポケットから出したツールでガチャガチャと手錠を弄る。
手錠の鍵を外し、自由の身となったメルフィンは静かに風船で夜の闇へと消えていった。
一方で取り残された希ちゃん・・・
いつの間にやら周りには警察官が数人集まってきていた。
「あ・・・あの・・・大丈夫・・・ですか?」
対応に困った警部が希ちゃんに声をかけると・・・
「フフ・・・フフフフフ・・・」
不気味に笑う希ちゃんに警部や警察官は顔を見合わせる。
「あの・・・」
「みんなみんな・・・私のこと馬鹿にして・・・」
憎悪・・・怒り・・・哀しみ・・・17歳(見た目年齢10歳ぐらい)な希ちゃんにしてはどす黒いオーラに大人達は少し引く。
「いいわ・・・わかったわ・・・」
静かにゆらりと立ち上がる希ちゃん。
「ペンダントを盗んだあの黒マントのミイラ女も・・・怪盗ルシファーも・・・みんなみんな・・・私が捕まえてやるんだから!!ロリっ娘を怒らせるとどうなるか教えてやるわ!!」
「「「認めた!!?」」」「「「コンプレックスと向き合った!!!?」」」
「何をグズグズしているの!?早く奴らを負いましょう!!ルシファーの手錠に微弱な電波を発する塗料を仕込んでおいた!きっと手首にだって付着してるはずなんだから!それを元に追跡するわよ!!」
「「「は!!はい!!」」」
※ ※ ※
あの犯人を追ってメルフィンがたどり着いた場所は横浜の貨物港だった。
TR-1と書かれた廃倉庫・・・
そこで、メルフィンが見たものは・・・一台のスポーツカーだった。
深紅の塗装が施されたアルファロメオ・・・それは、丘で待っているはずのお姉さまの車・・・
音もなく屋根まで登って、窓から倉庫を確認していく。中は四階層になっており、元々は海外から輸入した缶詰や冷凍物を一時保管していくためのものだったらしく、庫内にはまだ廃棄されず余った缶詰や巨大な冷蔵室などが残されていた。
そして、一番上の階層にたどり着き、小さな窓から中を除くと・・・その光景に背筋が冷えた。
船の錨のようなもので身体を巻かれ、動けない状態にされたシルフィリアが床に乱暴に転がされていた。
もちろんあのペンダントを盗んだミイラ女も居た。
「ずいぶんと無様ねぇ・・・幻影の白孔雀・・・白麗なる騎士姫・・・白駕籠の孔雀・・・稀代の殺し屋・・・そんないくつもの名前で呼ばれたあなたが・・・今はこうして倉庫に転がされているんだから・・・」
その言葉にシルフィリアはクスリと笑った。
「私を鹵獲してどうするつもりですか?利益があるとは思えませんが?」
「さぁ、どうしようかしら・・・麻薬漬けにしてどこかの変態に売るのも悪くないし、この場で殺して私自身の名前を高めるのも悪くないわね・・・まあ、なんにしても・・・」
乱暴に前髪をつかみ、無理矢理上体を持ちあげて顔を近づける。
「利用価値が無いってことはない・・・状況を少しは考えてからモノを言ったほうがいいよ・・・」
くっ・・・このままじゃお姉さまが・・・
だが、近くに入り口はない。それに、元冷蔵倉庫ということもあり、簡単に壊せるほど壁は薄くないだろう・・・
何か対策を考えなければ・・・
だが、お姉さま無しで思いついた作戦は・・・
「やっぱり・・・正面突破しかないよね・・・」
下までまた戻って大きなモンスターのような倉庫の入り口を見上げる。
中からはいくつもの足音が聞こえる。おそらく見張りが居るのだろう。
大人達を目の前にいくら魔術が使えるとはいえ、10代前半の少女にできることはかなり少ない・・・
でも・・・
「助けなきゃ・・・」
大好きなお姉さまを・・・それにあの翡翠のペンダントも・・・
だが・・・
「見つけた・・・」
突然の後ろからの声に心臓が飛び出るほどびっくりしながら、メルフィンが振り返った。
そこにいたのは・・・
怒り心頭といった感じの希ちゃん。しかも、普段の元気っ子ではなく、目が死んでいるというか、多少病んでるというか・・・それがまた怖い・・・
「今度こそ逃さないからね・・・」
「いや・・・あの・・・」
「あなたが私の頭をタライで殴ること12回・・・」
「あ・・・数えてたんだ・・・」
「だから私には60回あなたにやり返す権利がある」
「5倍増し!?」
「でも、希ちゃんは優しいから-10回まで減刑して50回で許してあげる」
「それでも十分多くない!?4倍以上だよ!?」
「というわけで早速私はあなたをとりあえず倉庫の中のとある柱に結びつけてあなたの頭をこのタライであなたの頭を何度も殴ろうと思うんだけど・・・」
「ちょっと待って!!その特大タライはどこから出したの!?明らかに私があなたの頭を殴ったのは小さいタライだったよね!?」
「やり返すのには5倍返し・・・」
「タライの大きさまで!?」
「ただし希ちゃんの優しさを考慮して、ちゃんと大きさは10mmだけ小さくしてあるわ・・・」
「そんな微妙に減らしてくれても全然ありがたみないよ!!」
「その後で、あなたを警察に突き出す」
「殴られた上にさらに警察にまで逮捕されるの!?ひどくない!?」
「ってわけで、さっさと縛り付けるから、早くあの柱に縛り付けられなさい」
「嫌だよ!殴られるんでしょ!?」
「おい・・・お前らなにしてる!!」
どうやら騒ぎすぎたらしい。中から黒服の男が一人出てきてこちらに近づいてくる。明らかに屈強そうな肉体。くっ・・・油断した・・・電気系統の術でなんとか失神させるしか・・・
でも、使える電気系統でちゃんと人を殺さないようなように威力を制御できるものなんて・・・でも、ここで捕まるわけにはいかないし、こうなったら一か八か・・・
「うるさい!今私が話してるでしょ!?」
信じられないことが起きた。
希ちゃんが持っていたタライで黒服の頭を強打し、一発で失神させた。
というかあんな凶暴なタライで私の頭を50回も強打するつもりでいたの!?
「・・・っていうかこいつ誰?」
殴ってから聞くし・・・でも、今の一撃で若干冷静になってくれたようで、目にヤンデレな光はもう宿っていなかった。
「簡潔に言うと、今あなたが殴り倒したのはあの翡翠のペンダントを盗んだ奴の手下ってところね」
「!?」
「ちなみに、上には私の知り合いの女性も拉致監禁されてる。つまり、上に居るのは盗賊兼誘拐犯ってことになるわね」
「じゃあ、あなたを逮捕してから、上の奴を逮捕すれば問題ないわね」
「何言ってるの!?上に居るのは私よりも極悪な犯罪者なのよ!?人質がとられてていつ殺されるのかわからない状況なのよ!?」
「殺される・・・」
「そう・・・さっき覗いたときは前髪を無理矢理つかんで引きずり起こされてた・・・しかも・・・なんだかよく分からないけど、売るとか言われてたのよ!?私を捕まえてる間に一般人がひどい目にあわされたらあなたどうするの!?」
「うぐぐぐぐ・・・」
「・・・どうすればいいのかとかわかるよね?」
「・・・どうするのがベストなのかはわかるけど、すべからくやりたくないこともわかるよ」
「でもやらなければならないこともわかるよね?」
「・・・うん・・・」
「じゃあ・・・決まりね・・・」
「にゅー・・・」
悔しそうになんとも言えない表情を歪ませる希ちゃん。だが、メルフィンは静かに上の階を見据えた。
「待っててね・・・お姉さま・・・いくよ、探偵さん・・・」
「わかってるわよ怪盗!」
はい・・・というわけで・・・次回でラストになるのかな?いや、たぶんあと2話ぐらいになりそうです。感想ください!喜びます!!
ではでは。
by shauna-crown
| 2011-09-14 00:02
| シャウセツ
|
Comments(2)
Commented
by
broken-range at 2011-09-14 00:34
金ダライwwww病んだ希ちゃんも可愛いよ希ちゃん!! けど、希ちゃんって10より大きい数字かぞえることできたのk(ry
でも探偵としてさりげなく色んな仕掛けを施しているところは流石ですw もしかして真奈美より優秀かも?
そしてメルフィンもドジっ娘ぶりが愛らしいですねえ。何気に探偵と怪盗は、二つの競い合う美しい花でもあり永遠の友のように感じました。
では、ろりこん!
でも探偵としてさりげなく色んな仕掛けを施しているところは流石ですw もしかして真奈美より優秀かも?
そしてメルフィンもドジっ娘ぶりが愛らしいですねえ。何気に探偵と怪盗は、二つの競い合う美しい花でもあり永遠の友のように感じました。
では、ろりこん!
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by
shauna-crown at 2011-09-14 23:56
>希ちゃん
希ちゃん高校入試合格したよね!?はっ!!まさか校長先生が実は真奈美パパなのか!? 希ちゃんもメルフィンもここぞという時に詰めが甘いんですよね。
ロリはドジっ子が可愛いと思うのです!!
ではでは。
希ちゃん高校入試合格したよね!?はっ!!まさか校長先生が実は真奈美パパなのか!? 希ちゃんもメルフィンもここぞという時に詰めが甘いんですよね。
ロリはドジっ子が可愛いと思うのです!!
ではでは。